データマネジメントの取り組みから最良の成果を得るための指針となる「戦略」について確認していきましょう。
3.1 データマネジメント戦略とは?
データマネジメント戦略とは、「組織の目標達成に向けたデータ活用の指針を作ること」です。
目標達成に向けて、どういったデータが必要でそれをどのように集め、統合し、利用していくかを全体最適の視点で考えなくてはいけません。
まずはデータマネジメント戦略のイメージを持って頂くために、全体像を整理した図を紹介します。
「ビジョン」では、戦略に責任を持つ人から「あるべき像」について発信を行います。
ビジョンとは「将来像や展望」という意味を含んでおり、取り組みに関わる人すべてがそれをイメージし行動につなげやすくするためのメッセージです。
できるだけ多くの人がビジョンに共感し「行動しよう」と感じてもらうように、シンプルで分かりやすく、説得力のあるメッセージを届ける必要があります。
(例:「わたしたちはデータを活用することで最高のサービス設計を行い、顧客満足を高めます!」)
「計画期間の目標」では、長期的(2~3年間)な取り組みの目標設定とそれに向けた実行計画を作ります。
大きなイメージとしては、「何に対して」「なぜ」「誰が」「どれくらいの期間で」「どのように取り組むか」について取り決めます。以下はその一例です。
- 「何に対して」➡データマネジメントを行い、競争の優位性を築くための大きな目標を設定。
- 例:「全社員がデータを用いて意思決定するための環境を作る。」、「データ分析の生産性を50%向上させる。」
- 「なぜ」➡「何に対して」をなぜ取り組む必要があるのか?根拠を定める。
- 例:「勘や度胸による意思決定では市場の変化に対応できないため。」、「データ分析のスピードが遅いことから意思決定が遅れ、収益の機会損失が発生している。」
- 「誰が」➡データマネジメント戦略を導くリーダーや推進チームの役割・責任、現場組織との関係性などを決める。
- 例:「CDOが戦略を統率。直下のプロジェクトメンバーが現場組織と連携し、データマネジメントを推進する。」
- 「どれくらいの期間で」➡目標達成に向けたステップを設定。
- 例:ステップ① 「データ統合基盤を構築する」、ステップ② 「データを見える化する」、ステップ③ 「データを元に意思決定できる」、ステップ④ 「意思決定の30%はAIで自動化する。」
- 「どのように取り組むか」➡取り組む際のポイントについて取り決める。
- 例:「誰もがいつでもどこでもデータにアクセスできるように、クラウドベースのデータ基盤を構築する」、「全員がデータを活用できる人材になるための教育環境を整備する」)
「KGI・KPIの設定」では、掲げた目標に向けた活動状況を数値化し管理することで、計画の達成度合いの確認や改善策につなげます。
KGIとはビジネスのゴールを定量化したものです。(例:売上額、利益額、コスト削減額、生産性〇%改善、など)
KPIとはKGIを達成するまでのプロセスを定量化したものです。(例:「売上額」をKGIとした場合、KPIは「客単価」、「数量」、「回転率」、など)
KGI・KPIは一般的にビジネス指標を測定するために使われますが、データマネジメントにおいても同様に使います。
設定する際のポイントとしては、「データを活用し最終的に事業活動のどの点を改善させるのか?」に焦点を置き、その焦点を要素分解し、要素ごとの取り組みの有効性を評価していきます。
最後に、「各業務の運用・管理」では、KGI・KPIを達成するために、現状の業務内容やプロセスを調査・整理し、関係者が効果的に動けるような仕組みを作ります。
具体的には、主管部と事業部が連携できる「CoE」(=Center of Excellence)呼ばれる、ビジネスとITのキーマンが連携し、組織にとって最良の行動につなげていくチームを組成します。
CoEはデータマネジメント戦略を指揮する人の直轄チームとして配置されることが多いです。
彼らは「ビジョン」を十分に理解し、それを現場側で再現する橋渡しの役割を持つことからとても重要です。
CoEは前線で活躍する人たち(例:営業、サポート部隊など)が求めているデータの要件を取りまとめ、可能な限り具現化するためにITの視点を取り入れ、最適な解を探っていきます。
最適解を定めた後には、素早い検証を繰り返し、計画期間の目標を達成していくことを狙います。
以上、データマネジメント戦略の概要を紹介してきました。
「戦略」といわれる以上、データマネジメントにおける取り組みの骨子となる部分です。よって、ピラミッド図の具体的な説明は別記事で行おうと思っています。
次の記事では、「データマネジメント戦略のゴール」とはどういったものがあるのか?について説明します。